鑑真像
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最後に仏像ではありませんが、唐招提寺には鑑真の肖像彫刻があります。日本で最初の本格的かつ日本の古代肖像彫刻では最高の像の一つです。教科書で見た方も多いと思いますが、一度見たら忘れないほどではないでしょうか。ただ静かに座り、肖像でも仏像でも最も重要な目をつむりながらも、忘れられないインパクトがあるのは、モデルの人間性とそれを表現している迫真性ではないかと思います。
小学館日本美術全集より
鑑真和上座像 国宝 脱活乾漆造 彩色 80.1cm 御影堂
表情には、精神の安楽と優しさをのぞかせる和やかな笑みがただよい、その奥に多くの苦難をものともせず乗りこえてきた、強靭な意志を秘めているように思います。首は太く、肩や胸はがっしりとして、肘の構えも大きい。腰から両膝にかけても十分な奥行や幅、それに厚みがあり、上体をしっかりと受けとめる。その来日の試みから亡くなられるまでの話を聞くとその精神と行動力にますます魅せられます。
鑑真は弟子の思託に「汝、我が為に戒壇院において別に影堂を建て、旧の住房は僧に与えて住まわしめよ」と遺言しましたが。実際は死後、住房に置かれました。弟子たちに移動するのをためらう気持ちがあったのでしょう。